データでみる木材と健康


木材は人の体にも心にもやさしい素材です
日本人にとって「木は、正倉院や法隆寺の五重塔などの歴史的建築物が示すとおり、建築材料として耐久性にも非常に優れた材料でした。また身の回りの材料としても多く使われてきました。例えば、日常の家具や道具として、着物や大切なものを保管しておく桐タンスなどの例をあげるまでもなく沢山ありました。

内装材としての木は、あまりにも身近なために、その良さをかえり見られることなく、1960年代の高度成長期以降、科学技術によって開発された新材料に取って変わられてきました。

しかし近年では、合板や表面が新素材の内装材が普及するに従い、加工時に使用された薬剤によるシックハウスの問題などが生じてきました。そのため、もともと日本の住環境に合った、木の持つ多くの特性が見直されるようになってきたのです。

ここでは、内装材として木を使うことのメリットを、人の健康面に及ぼす影響に関する調査や実験の中から、興味深いデータをいくつかご紹介いたします。

これらの実験結果が示すグラフを見ていただければ、“木”のもつ住み心地の良さを発揮する優れた“力”を、きっと皆様も再認識していただけることでしょう。

目次
◎木は動物にとって快適な環境でした
◎ダニに嫌われる木の床
◎優れた調湿機能をもつ木材
◎木は熱を伝えにくい材料
◎衝撃をやわらげる木の床
◎木は人の目にもやさしい
◎フローリングの遮音対策


◎木は動物にとって快適な環境でした
木と健康の関係を示す実験の例として、静岡大学農学部で行われたマウスを使った実験があります。
医学実験に使用されるマウス(ハツカネズミ)を、木製、金属製、コンクリート製の3種類の飼育箱を10箱ずつ用意し、その中にスギのおがくずを敷き、それぞれ8週間飼育してから交配。

下記のグラフ(子の生存率、子の成長)は、交配後にそれぞれ3つの飼育箱から雄のマウスを除き、雌の分娩したマウスを23日間にわたって観察したものです。

その観察の結果、木製の箱の場合、子マウスの生存率は85.1%あり、金属製の箱では41.0%、コンクリート製の箱では6.9%しかありませんでした。さらに引き続いて生き残ったマウスの成育状況を観察したところ、木製では体重も順調に増加していましたが、金属製とコンクリート製では木製での生育よりも劣っていた結果となりました。

グラフ_子の生存率_0219.jpgグラフ_子の成長_0219.jpg

これと同様な実験が名古屋大学でも行われ、似たような結果が出ましたが、これらの実験からの条件だけでは、木が明確にマウスの育成に良好な環境だったとは言い切れませんでした。

もう一つの静岡大学農学部でのマウスを使った実験では、異なる二つの素材の床をもつ箱を用意して、そのどちらをマウスが好むかを調べたものです。結果としてマウスが好んだ床は、スギ、合板、ヒノキ、クッションフロアー、塗装合板、コンクリート、アルミニウムという順番になりました。

これらマウスを使った二つの実験の結果を援用して、単純に木が人においても一番良い影響があると言い切れません。人の生活はもっと様々な要素がからみ複雑なものだからです。ただ、木を使用した環境が動物の育成にも優位であるのであれば、人においても過ごしやすい環境をつくることのできる素材であることは間違いないと言えるでしょう。


◎ダニに嫌われる木の床
床は住居の中でも最も人の接触の多い部分です。その床に求められる機能の一つに衛生上の問題があります。床は常に清掃していないと、人のフケや毛髪、ホコリや塵の発生で汚れてしまいます。これらゴミや汚れをそのままにしておくと、ダニの発生を招きやすくしてしまいます。

特に畳の床やカーペット、絨毯などを敷いている場合では、通常の3倍ものダニが多かったという調査もあります。神奈川県の衛生研究所が一般住宅の床を調べた結果、多くの住宅でダニが見つかり、1万匹ものダニがいたというひどいケースもありました。

グラフ_ダニの数.jpgグラフ_ヒノキ精油のダニ抑制効果_0219.jpg

右の調査グラフ(木の床に改装した後のダニの数との比較)では、カーぺットの床を木の床に改装した場合のダニの数を比較したものです。夏から冬にかけて調査を行っていますが、木の床に改装後では明らかにダニの数が減少しています。

また、ヒノキやスギの木屑の中でダニを繁殖させた実験では、左のグラフが示しているように、ヒノキやスギに含まれる精油成分のもつ効果によって、床のダニの繁殖を抑制する効果があることが確認されています。

特に無垢スギの床は、カーペットや絨毯に比べて清掃しやすく、細かいホコリや塵を容易に除去できることに加えて、この精油成分の抗菌・ダニ抑制効果によって、ダニの繁殖を抑制できるという効果が期待できます。


◎優れた調湿機能をもつ木材
木材は下のグラフ(各種材料の平衝含水率)のように、他の材料に比べると何倍もの含水率をもっていることが分かります。これは、表面だけでなく木材全体で、室内の湿度が高すぎると湿気を吸収し、低すぎると湿気を排出して、室内の湿度を適度に保つ働きを持っているということです。

グラフ_材料の平衝含水率.jpg

この木の調湿機能は、10.5cm角のスギ材では柱1本の中に、何とふつうのビール大ビン2.5本分もの水分を含んでいます。その中の0.5〜1本分ほどの水分が出たり入ったりして、常に室内の状態に応じて湿度を調節しているのです。柱にかぎらず内装に使われた床、天井、壁など木の部分は、全てこの調湿作用を行っています。

木の優れた調湿機能を検証した実験データをもうひとつご紹介してみましょう。この実験では、木の戸棚と鋼製の戸棚それぞれの内部湿度を4日間に渡って測定したものです。

グラフ_戸棚の中の湿度変化.jpg

測定結果の上のグラフ(戸棚の中の湿度変化)を見ると、外部の気温や湿度が変化しても、木の戸棚の方が鋼製の戸棚に比べて、湿度は明らかに安定しています。これは室内の家具で実験したものですが、木のもつ調湿機能が作用した結果と言えます。


◎木は熱を伝えにくい材料
木材は無数の細胞を保ったままの素材として使用されるため、調湿作用で見たように多くの細胞壁間(空孔)に空気を含んでおり、湿気として水分も蓄えることができます。

木材は、この熱を伝えにくい空気層(熱伝導率0.0241W/m・k)があることによって、熱伝導率が低い、つまり熱が伝わりにくい材料のひとつになっています。

熱を伝えにくい材料の例として鍋敷きや箸があります。また逆に金属やコンクリートの冷たさから保護するため、肌の接する手すりや床など木を使っている例も多くあります。

例えば、下記のグラフ(各種材料の熱伝導率)によると、スギの熱伝導率は0.087ですが、コンクリートの1.0と比べると約12分の1となり、それだけ熱を伝えにくい材料ということになります。その他の建築材料と比較してみても、ガラス0.7で8分の1、花崗岩3.3で38分の1となり、鉄53で610分の1、アルミニウムの175にいたっては2000分の1以上もの差があります。

グラフ_材料の熱伝導率.jpg

参考までに言えば、熱伝導率が低い(断熱性が高い)断熱材のグラスウール(24K相当)は、等級にもよりますが0.036〜0.05あり、熱の伝えにくさはさすがに木の約2.5〜3倍以上あります。

また、同じ床材ということで、畳の熱伝導率0.11とスギの熱伝導率0.087と比較してみると、スギは畳以上に断熱性が高い床材であると言えます。


◎衝撃をやわらげる木の床
床の硬さは歩きやすさだけではなく、安全性にも影響します。硬い床では転んで頭や体を打ったとすると硬い床ほど衝撃が大きく、ケガをしやすくなります。

右のグラフ(床の硬さ)の実験は、ガラス玉を床に落として割れる高さを計測して、それぞれの床の硬さを比較したものです。この実験結果では、木材は4mの高さからガラス玉を落としても割れず、プラスチックでは2m、大理石では約1.2mの高さで割れてしまいました。このことから、木材の衝撃吸収力はプラスチックの約2倍、大理石の3倍以上あることが分かります。

グラフ_床の硬さ.jpg

コンクリートの床はPタイルなどを張ってもなお硬く、木の床材を張った床の方が2倍も衝撃吸収力を保つことができ、運動時や転倒したときの安全性を高めることができます。このように体育館で木材のフローリングが採用されるのも、激しい運動では体重の5〜6倍もの過重がかかるため、その衝撃をやわらげるため適度な緩衝性と木の反発性を利用するためなのです。


◎木は人の目にもやさしい
施木の内装材を使用するメリットのひとつに、肌触りや視覚的な心地よさをあげることができます。視覚的なことで言えば木の最も特徴的なのはその色です。

下の反射光の波長分布のグラフ(各種材料の反射曲線)を見てみると、木質材料は波長の短い有害な紫外線をほとんど吸収してしまいます。また、木は金属やプラスチックのようにきつく反射せず、木材の表面の微細な凸凹が光りを散乱させて柔らかな反射光としてくれます。

グラフ_材料の反射曲線.jpg

この木のもつ反射光の特長から、人の目にやさしい内装材と言えます。

もう一つ木の特徴に木目があります。この木目が人に与える効果として注目されているものの中に「ゆらぎ」や「ファジー」と呼ばれる効果があります。これは人は波や風の音などの自然現象など繰り返しがあるものには、何でも周期性があるが、その周期性は規則正しく繰り返されるよりは程よく乱れた方が、人の感覚では心地よく感じるという理論です。

この「ゆらぎ」理論でよく例に出されるのが、小川のせせらぎや柔らかくそよぐ風といった自然現象としての例です。また木目もその例のひとつで、一見して規則的に見える木目でもよくみると同じ模様はなく、少しずつ異なって繰り返しています。この木目の少しずつ異なる規則性こそが「ゆらぎ」効果を生み、人の感覚に心地よさを与えてくれます。


◎フローリングの遮音対策
木にはこれまで述べてきたように、内装材として、健康という面において多くのメリットを持っています。しかし、デメリットも全く無いわけではありません。

その代表的なものは、音の問題です。木は、バイオリン、ピアノなど元来楽器にも多用されるように、板材としたときに軽く弾性が大きく、音を伝達しやすい材料であるからです。そのため木の板材そのものだけで、音をさえぎる遮音材とするには不適な素材と言えます。

木をフローリングとして用いる場合、特に集合住宅で階下にも部屋がある場合には、それぞれの規定する遮音性能をもつ素材を敷き込むなどの施工が必要となってきます。

ピアノと杉フローリング.jpg


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